Facebookページ「ひとりじゃないよver.3.5」は全然更新できていないので、たまには違うところから持ってきた記事を。

個人のnoteに8月に投稿した記事を、こちらに転載しておきます。24歳の知的障害と自閉症のある娘について書いた記事です。

******(以下、転載)******

今日、ケーキを買ってきて静かにお祝いしたのは、とても嬉しい日だったから。書こうかどうしようかちょっと迷ったけれど、やはり覚えのためにも書いておこうと思います。

今日は娘のケア会議でした。娘の関係者が集まって、娘について情報共有する場。この会議の呼びかけ人である相談員さんが作ってくれたレジメにはこう書いてあります。「…これを機に現在の支援者の顔合わせや情報共有を行い、今後、ご本人の生活を支援していくための手立てをそれぞれの事業所が持って帰り、今後の支援に活かしていくことで、ご本人やご家族が望まれる生活に後ろ盾できる契機となるように…」

うちの娘の場合は、娘を担当してくれている相談支援専門員さんと、移動支援(ヘルパー)の事業所の管理者さんと、短期入所(ショートステイ)の事業所の方と、娘が就職するまで世話になっていた就労移行支援事業所の方と、娘が現在勤務しているお店(一般企業)の店長さんと、そして家族代表として私が集まっての会議となりました。本人も参加するのが本来の形ですが、今回は初回なので私の希望を入れて本人抜きでの顔合わせでした。

詳細を書くと個人情報の垂れ流しになってしまうので書けませんが、なんというか、

24年間育ててきた母親の私にとっては、ちょっと感動的な集まりの場だったのです。

娘は、障害ゆえに手先をうまく動かすことが苦手で、細かい作業はなかなか難しいです。難しい、はずです。それは、就労移行支援の場で行ってきた実習でも明らかだったはずです。ところが会議の場で聞いたのは(娘が勤めているのは飲食店関係の店)、厚焼き玉子を器用に切ったり、魚を丁寧に叩いたり、そういう仕事をしている、という話でした。店長さんは言われました。「同じ食材でも、適当に、粒が残るように雑に叩くのと、丁寧に叩くのとでは味が違うんです。雑に叩くと大味になりますが丁寧に叩いてくれるのは美味しくなるんです」

ずっと、「やり方が雑になりがち」であり、「正確性に欠け、きちっとできていなくても本人が気にしないところがある」と言われてきた、娘。それが娘の真実だと思ってきました。ところが、「退勤時間が迫っていても、時間を気にしながらも、でもすごく丁寧にしてくれるんです」と店長さん。手先がうまく動かせないはずの娘が「厚焼き玉子を切る」って!?潰さずに!?

にわかには信じがたい話なのですが、なんとバイトさんが型紙を用意してくれて、「これに沿って切ればいいんだよ」と教えてくれたのだとか…。そして「今はむしろ、厚焼き玉子切らせて!って感じです。誰でもそうですが褒められると嬉しいみたいで、近くに来てへへへっと嬉しそうに照れて笑うところがとてもかわいいんですよね」と。娘は、私が少し聞いていたよりもずっとたくさんの仕事をしており、「え!そんなことまでできますか!」と驚くばかりでした。いつの間に、そんなに色々な仕事ができるようになったのでしょう。というか、いつの間に、どうやって、そんなにたくさんの仕事ができるように教えてくださったんでしょう。

うちの娘はキツく叱られるのが何より苦手で、キツく言われるとむくれてしまいます。そうなると指導もうまく入りません。それを、むくれさせることも投げやりにさせることもなく、様々なことを教えてくださったというのは、これは素人技じゃない…!

というか、褒められるとその気になって頑張る娘の性格をちゃんと把握してくださっている店長さん…。そして支援ツール?まで用意して厚焼き玉子の切り方を教えてくださったというバイトさん…。神なの??((((;゚Д゚))))うちの娘、24歳になるところなので、恐らく学生バイトさんは娘よりも年下だと思われ…。

店長さんも、バイトさんも。ヘタなB型事業所職員とかよりずっと優秀な支援者じゃぁぁないですか…。おそらくそれを、支援とも思わずにしてこられたんでしょうね…。

もちろん、休日には4キロの米を6回も炊くような重労働を厭わずやったり、インターネット注文を率先して処理したり…と、うちの娘が、知的障害と自閉症という障害があるうちの娘が、八面六臂の活躍を見せてくれているのもまた事実なんでしょうが。彼女がそれだけ頑張れるというのは、やはり彼女の職場環境がとてもいい故だと思うんですね。本人をのびのび働かせてくれるような職場だからこそ、100%の力で頑張れている。

娘が勤めている会社は(もちろん障害者雇用という形で雇われてます)、障害者の雇用経験が豊富にあるような場ではありません。正直、岡山県ではこれまで一人も採用したことがなくて、娘が初めてだったわけです。なのに…。

ずっと、私たち親は、「障害者雇用の実績が豊富なところに就職させたい」とみんな考えていたと思います。ところが実際に娘を社会に送り出してみて思うのは、そういう風に決めつけて狭く考える必要はないんじゃないかということ。

一般企業でも、理解してくださる人は、いる。いい出会いがあれば、こんな風に、社会の役に立つことができる。

信じて送り出してよかった、と1年前の決断を思い起こします。

もう、これができない、あれが苦手なはずだ、と言うのをやめよう、と思いました。親の思い込みは、あえてもう言わないほうがいい。「どうしたらできるか」は、もう、私以外の人が考えてくれるのです。

店長さんは言われました。「僕が今後、彼女にしてもらいたい仕事と、ご本人のしたいこととが、折り合っていけるといいなと思います。いきなり全部やらせようとは思ってないんで。少しずつでいいんで」

「最後に何か質問がある方は?」と相談員さんが呼びかけたら店長さんがハイッ!と手を挙げて「あの、職場の不満とか、何かみなさん、ご本人から聞かれていませんか」

思わず全員、強く首を横に振ったのでした。「まったく言ってません!笑」事実娘は毎日はりきって仕事に行って、自分の仕事に誇りを持っているのが伝わってくるので…。

「安心できました」と言ってくださった店長さん。人の温かさに、あまりの温かさに、涙が出そうでした。どの関係者からも「特に何も問題はないです」という報告ばかり。ほんと、涙が出そうでした。泣きませんでしたけどね。

嬉しい気持ちを胸に抱えて、何かしたくなり、娘の好きな抹茶ケーキを買って帰って、夜は二人で密やかにお祝いしたのでした。娘はなんでケーキを買ってもらえたのかいまいちピンと来ていないと思いますが、私はひとり、満足でした。

会議に行くまではドキドキしていたのに、終わってみれば指の先まで幸せでした。

もう、どんなことにもがんばれる。今は、そんな気持ちです。子育ては報いられることを期待してするものではないけれど、こんな形で苦労を溶かしてもらえる日もあるんだなぁと、しみじみと噛みしめています。

******(転載はここまで)******

写真は私が残業でいないときに娘が作った朝ごはんみたいな晩ごはん(左)と、野菜が全然無い状態で作ったインスタントラーメン。乗っているのは焼海苔です。ラーメンを作った時は自分でも嬉しかったのか、勝手に知人に「私が作りました」と写メ送ってたみたいです(笑)