さて、最後に、中学生や高校生など、大きいお子さんの保護者の方へのお話です。今回の休校の措置で、仕事には行かないといけない、なのに子どもが急に家にいることになった…そんなご家庭も多いのではないでしょうか。子どもを1人にはさせられない。どうしよう、困った…と思われているでしょうか。

さて、ここで一つ検討してみたいのが、「本当に一人にさせられないのか」という点です。既に「いえいえ、うちの子、これまでにも留守番してきてますから大丈夫です」というのなら、いいのですが。かなり大きいのに、そしてそれほど障がいが重いわけでもないのに、留守番させてこなかった…そんなご家庭はないでしょうか。なんならこれを機会に、お留守番させてみてはいかがでしょうか。しかも、ただのお留守番ではなく、何かをお願いして、留守番してもらうのです。

私自身も成人障がい者の親ですが、お子さんが成人していても、我が子に留守番させられないと言ってしまう親御さんが、実際にまあまあ、いらっしゃいます。それほど行動上の問題があるひとではないのに、です。

本人が1人になる時間、本人が自分の裁量で過ごせる時間をを作らずに大きくしてしまうのは、あまりおすすめできません。一人にしたら危険がある場合は、もちろん見ている必要があるのですが、そうでないならば。いくら障がいがあるからと言って、一人きりになる時間、まかせてもらえる時間が確保されていないというのは、思春期・青年期のひとにとって、いいことではないと思います。

一人にすることで特別危険なことがない思春期・青年期のお子さんなのであれば、これを機会に独りでお留守番してもらってはどうでしょうか?その時、ただ単に留守番させるだけでなく、「これをやってほしい」と何か家事をお願いするのも良い手です。

私は自分の父が亡くなったとき、自宅に帰らず1週間母のそばにいました。そうせざるを得ない状況だったからです。

その時に、娘に頼みました。お母さんがいない間の1週間、あなたが最初から最後までお洗濯をしてね、と。
それ以前は、私が洗濯機を回したものを、彼女が干して取り込む、というところまではしてくれていましたが、最初から最後まで洗濯を任せたことは無かったのです。しかしその時、紙に手順を簡単に書いて渡して、「これでお願い」と頼みました。頼むしかない、と思いました。娘が17歳の時でした。

その時をきっかけに、娘は、今に至るまでずっと、家族の洗濯物を毎日、洗って干して取り込んでたたんで片づけてくれています。なんと下着の下洗いから、やってくれるのです。とてもとても助かっていて、あの時、無理やりにでも頼んでよかったなぁと思います。

非常事態って、障がいの重い子でも、なんとなくわかるようです。父の死で動揺して、ずっと泣いてばかりいた私や、周りの状況を見て、彼女なりにすごくがんばってくれました。一度も経験のなかった葬儀に参列し、お骨も拾ってくれ、そして私がいない一週間、毎日洗濯をして家族の役に立ってくれたのです。成長の大きなステップになりました。

皆さんのお子さんも、この機会に思い切って頼んでみたら、案外はりきってやってくれるかもしれませんよ。「頼りにされた」「任された」そしてそれが自分で(完ぺきではなかったとしても)「できた」の実感は、自信となってその人をまた成長させてくれることでしょう。もし可能そうなら思い切って、チャレンジされても、いいかもしれません。