• 令和3年夏に私たちは赤い羽根新型コロナ感染下の福祉活動応援全国キャンペーン/居場所を失った人への緊急活動応援助成第3回の助成金に応募し採択していただけて、【障がい児の保護者の孤立を防ぐためのアウトリーチ型居場所事業】という事業を令和3年秋から令和4年春まで実施することができました。これも共同募金の寄付者の皆さまの応援のおかげです。ここに実施の内容をご報告するとともに寄付者の皆さまへお礼を申し上げます。応援、本当にありがとうございました。

 

【障がい児の保護者の孤立を防ぐためのアウトリーチ型居場所事業】

  • 《事業の概要》

  • 私たちは2012年の団体立ち上げより一貫して障がい児・者の「親」の支援をしてきたNPO法人です。本申請事業は、私たちがこの春で丸7年運営している「障がい児・者の保護者の居場所(カフェ形式の相談所)うさぎカフェ」のアウトリーチ活動(出張うさぎカフェ)でした。「うさぎカフェ」自体は、「待ちの支援」です。来所者が来てくれたら支援できますが、うさぎカフェまで来ない・来られない人に対して支援の手を届かせることはできません。しかし、困難度の高い人ほど、支援を得るためにわざわざ居住地から遠いところまで出向いていくことは難しいため、より支援を必要とする人にこそ支援が届かないというジレンマを抱えていました。そこで、この事業で目指したのは、こちらから出かけていく(アウトリーチする)ことにより、困難を抱えた家族がより容易に支援につながれる(相談と居場所の機能を提供する)ようにすることでした。大まかに分けて2つの活動があり、1つめの活動は「コンセプト・カフェ“支援との出会い場”」という、複数の支援者(相談支援、就労移行等5名)と一度に相談できる場、以前からうさぎカフェを会場としてやっている活動を、市内の各地に出張して行うというもの。それを幼児~中学生の子の親を対象としたものと、高校生以上の親を対象としたものの2種に分け、それぞれ支援者チームを編成し、市内の各所で開催しました。もうひとつの活動は障がい児の父親を対象とした「お父さんのための夜カフェ」を開催することでした。

 

  • 《活動日数》13日 《支援対象者実人数》67名 《支援対象者延べ人数》75名

 

  • 《本助成による事業(活動)の成果》

  • 本事業は、コロナ感染拡大の影響を受けてスケジュール変更を余儀なくされた時期もありましたが、結果的には当初の計画(1か月に1回実施)を1日上回り、出張カフェ開催日数13日、参加者延べ人数75名(実人数67名)という実績となりました。コンセプト・カフェは、本申請事業実施以前にも、同内容で(場所はうさぎカフェ)、2カ月に1度行っていたのですが、その時は成人期の障がい者の親だけを対象としていました。しかし本事業で初めて、児童期の保護者向けに実施したところ、様々な気づきや学びがありました。《コンセプト・カフェの気づきと工夫、その後》①従来行ってきた成人期の障がい者の親の悩みは「恋愛や結婚」「住まい」「お金」といった現実に即したいわば普遍的テーマが中心でした。しかし児童期の親向けのコンセプト・カフェでは目の前の細々とした困りごとの話がどうしても多くなり、本質的な悩みに触れることが難しい展開になりがちでした。そこで途中から「障がい者のライフステージの壁」という図を作り、それを会の最初に参加者に提示することで、目の前の不安は一体将来のなんの不安に由来するものなのかを明らかにする作業を行いました。②①の取り組みから明らかになったのは児童期の親の悩みは福祉の制度の知識がないこと・成人障がい者の姿を知らないことが原因となった不安が大半を占めていました。つまり福祉の仕組みを知ることや成人期の事例を知ることで緩和できる悩みも多いのでは?という気づきがありました。③②の気づきにより、児童期に対して行うべきはコンセプト・カフェのような少人数かつ個別的な案件の相談の場ではなく、もっと大人数が参加でき、福祉の仕組みについて知ったり先輩の話や支援者・当事者の生の声を聴ける場なのではないか?そういう連続講座を児童の保護者向けに実施してはどうかという、次の段階への提案が支援者間でなされることにつながりました。本事業を実施したから更に踏み込んだ的確な打ち手を発案することにつながり、成果となりました。《お父さんのための夜カフェ》男性支援者にファシリ役をしてもらうこと、手作りの食事で温かな雰囲気を演出すること等の繊細な配慮を随所にすることにより、参加者が安心して話せる場としてのスタイルを確立することができ、常連も新規も受け入れる父親たちにとっての本当の「居場所」として成熟することができました。また、コンセプトカフェと父親支援で得た知見をもとに3月末には新しいコラボとして困窮者支援の団体と共にシングル家庭への相談支援の場づくりのトライアルをすることができました。コンセプトカフェ、父親支援とともに4月以降も継続していく予定です。

『障がい者のライフステージの壁』の図

 

  • 《事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み》

  • ほぼ事業計画通りに進行することができましたが、課題としては、地域の支援者の巻き込みがなかなかうまくできなかったという点が挙げられます。私たちが出張した先の資源とつながって、共にその地域の保護者を支えるという構図を期待したのですが、実際には支援者の数を増やしてもその人たちの仕事があまりないような状況であったため、途中からコラボについてはほぼあきらめる形となりました。ふだんからチームを組んでいない相手と初対面で良いコラボ効果を生むことは現実的ではないと実感した次第です。コラボ相手を次々変えるよりも、やはり支援者のチームはある程度固定化した上で「ゲスト枠」を1名分程度持っておき、そこのメンバーだけを入れ替えるくらいが適度かと考えます。支援者のチームワークは、出張カフェの場の質にダイレクトに影響します。今回、チーム歴の長い成人期チームが特に優れたチームワークを発揮して、コンセプト・カフェの場を充実したものにしてくれました。また、父親向けのカフェ企画も固定メンバーで行ったがゆえに回を重ねるごとに成熟していくことができました。障がい児の保護者の支援に関心を持ってくれる人を増やすこと、障がい児の保護者支援のスキルを身に着けた支援者を増やしていくことは私たち法人の命題でありますが、やみくもに新しい人を入れるのではなく、基盤となるチームを作りその力を育てることがまず大切であり、そこができた上で、少しずつ新規の支援者を迎え入れ、理解ある支援者を徐々に増やしていくというのが着実な道であると実感しました。

 

  • 《寄付して下さった方へのメッセージ》

  • このたびは、私どもの事業に対し温かなご支援をいただき誠にありがとうございます。私たちは活動を始めて10年経ちますが、障がいのある当人への支援を考える人はいても、その親に支援が必要だと考える人がなかなかいない状況のなか、保護者を笑顔にすることこそが子どもの笑顔につながるのだと自らの体験からも確信し、それだけを貫いて活動をして参りました。本申請事業を通じて、私たちのように親としての当事者ではない支援者の方たちが、熱心に親を支える場づくりを進めることができ、コロナ禍で人と人とが繋がりにくくなっている中であっても、多くの保護者が心ある支援とつながる機会を作ることができました。これも寄付者の皆様のご支援のおかげです。心より感謝申し上げます。どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

  • 《本事業に関する画像》